ハイグレクエスト 第2話

『ハイグレクエスト』の第2話です。

・第1話
こちらに過去の投稿をまとめていく予定です





「―――という訳で、勇者様を召喚させて頂いたというわけです」
「そんなことが……」
 レナは祭壇の中央にぺたりと座りながらルーナの話を聞いていた。

「この世界がハイグレ魔王の手に墜ちてしまうのは時間の問題です」
 ルーナは深刻な表情のまま続ける。
「勇者様、どうかこの世界を、レグローをお救い下さい」

「私にできることだったら何でもするよ!あと、勇者様じゃなくてレナでいいよ」

「あ、ありがとうございます!レナ様!」
 レナの答えにルーナの表情がパアっと明るくなった。
「別に呼び捨てでも良かったんだけど……。まぁいいか!で、私は何をすればいいの?」
 レナは笑顔で聞いた。

「レナ様にハイグレ魔王を倒していただきたいのです」

「な~んだ!そんなことかぁ~……え?」
 レナは笑顔のまま固まってしまう。

「ご安心ください。レナ様をお守りする者たちを用意しております」
 そう言うとルーナは後ろを振り返り、手招きした。
 その合図で、2人の少女が壇上へと上がってきた。
 1人目は小柄な少女だった。長いブロンドの髪を2本の三つ編みでまとめている。
 真っ黒のローブを身に纏い、左手にはてっぺんに赤い宝石の埋め込まれた太い木の杖が握られていた。
「私の名前はリン!よろしくね」
「リン!言葉使いに気を付けなさい!」
「私は全然かまわないよ!むしろそっちのほうが……」
 レナはルーナとリンの2人を交互に見ながら言った。
「じゃあ次はボクだね」
 リンの後ろで、すらりと背の高い、細身の少女がレナの前へと歩み出た。

「ボクは召喚士のルル。まだ見習いだけどね」
 白い小袖に空色の袴を履き、肩より短い黒髪を風になびかせながらルルは言った。
「わあ~!ルルちゃんって巫女さんみたい!」
 見覚えのある彼女の服装を見て、レナは嬉しそうに言った。

「巫女……?レナの世界にもこんな恰好をした術者がいるのか」

「術者っていうのかなぁ。でも、巫女さんもルルちゃんと同じで可愛いんだよ!」
「この格好が可愛いか。面白いことを言うんだね」
 レナの答えにならない答えにルルはケラケラと笑った。

「この2人がレナ様をお守りする魔術師たちです」
 各自の自己紹介が終わったところで、再びルーナが説明を再開する。
「ハイグレ魔王の拠点のあるスノーシティへ向かうには、ソウスシティとウェートシティの2つの街を経由する形になります」

「ちょっと待って!まだ私は行くって決めたわけじゃ……」
「大変身勝手な申し出であることは重々承知しております。しかし、我々には貴女を召喚させて頂いた以上、元の世界へとお還しする責務があります。そしてその方法を唯一知るサーラ女王様は敵の言いなり……。選ばれし勇者であるレナ様のお力を借りる以外には……」

 ルーナはレナの言葉を遮ったまま話を続けた。

「それに……レグロー城から最も遠い町とはいえ、いずれはここにも異星人の手が伸びてくるでしょう。ここで待つだけではレナ様、貴女まで敵の手に……」

「へ……?」

(ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!)
 レナは自分がハイレグの水着姿でコマネチを繰り返す姿を想像してみた。
 嬉しそうにガニ股になる自分の姿を思い浮かべたレナは、小柄な体をぶるりと震わせた。
「私、ハイグレ魔王を倒す!何もしないでやられちゃうより、戦って負けた方が諦めがつくし」

「ちょっと!縁起でもないこと言わないでよ!」
「リン、いくらレナ様が言葉遣いに寛容といっても限度がありますよ」
 ルーナがリンに釘を刺す。
 それから改まってリンへと向き直った。
「レナ様、我々の無理なお願いを引き受けて下さってありがとうございます。ソウスシティの神官には私から連絡をしておきます。今からなら夕方には到着できるでしょう」
「今からって私、荷物とか何も……」
「どのみちスイートタウンに満足な物資はありませんから、まとめてソウスシティで調達した方がいいでしょう」
 確かに祭壇と民家以外の建物は見当たらなかった。
「そうと決まればソウスシティにいざ出発!」
 そう言ってリンは持っている杖をソウスシティの方角へと振りかざすと、ずんずんと歩き始めた。
 レナは置いて行かれないように、慌ててその後を追った。
 最後にルルが続き、勇者レナ一行の旅が始まった。



 スイートタウンを出発してから数時間。
 この世界を救うために結成されたパーティは、ソウスシティを目指し歩き続けていた。

「じゃあ2人は同級生なんだね!」
 セーラー服に革靴と、その集団の中で浮いた格好をしているレナが目を輝かせていた。
「今、スノー魔術学校は休校状態だけどね」
 ルルがため息交じりに言う。
「先生たちも敵の襲来のときに招集されて洗脳されちゃったのよ」
 悔しそうにリンが言う。
「ルーナ様が避難命令を出して下さらなかったら、今頃は私たちもハイグレ人間だったかもしれな、ふご!?」
「シッ、静かに」
 ルルが動き続けるリンの口を塞いだ。
 レナも彼女の視線の先を見た。
「なに……あれ……」
 少し離れた小高い丘辺りに、集団が見えた。
 彼らはアヒルのオマルの形をした飛行体に乗り、頭にはパンストを被ってる。手には水鉄砲のような銃を持っているのが見えた。
「あれはパンスト団。ハイグレ魔王の持つ洗脳部隊よ。王女様や賢者たち、私たちの学校の先生をハイグレ人間に変えたヤツ。未洗脳者を見つけると容赦なくハイグレ光線を放ってくるから気を付けなさい」
 リンの説明を受けても、レナにはパンスト団がそんな強力な敵には見えていなかった。あの格好にあの武器といい、旅を共にする仲間たちの方が強く思えた。

 リンの提案で3人は近くの岩の陰へと隠れることにした。
 しかし、しばらく待ってもパンスト団は丘の周りを徘徊するだけで、移動する気配は見られなかった。
「遠回りになりそうだけど、丘を越えないで森を抜けて行く?」
 痺れを切らしたレナが提案してみる。
「ダメだ。この先は川が流れていて、橋はあの丘を越えた所にしかないんだ。橋を渡りきる前に見つかるよ」
 ルルはパンスト兵に聞こえないように、小さな声で答えた。

「じゃあ……いっそのこと正面突破しちゃう?」

「何を馬鹿なこと言ってるのよ。そんな事したら3人仲良くハイグレ人間にされて終わりよ」
 2度目のレナの提案はリンに一蹴されてしまった。

「今はここで待とう。根気強く、静かにね。それが一番安全で確実だ」
「そういうことよ。根気強く待つしかないの!」

「あっパンスト団が!」
 レナは丘の上を指さした。
 パンスト団は編隊を組み、次々とオマルの高度を上げていった。
「見つかっちゃったのかな……」
「いや違うわ!」
 オマルの下、丘の上に人影が見えた。
「あれは……」
「神官様の使いみたいだけど……学園の生徒かしら?」
 白いローブを着た女の子の2人組。
 容姿や背格好を見ると2人は姉妹のようだ。姉は腰まで、妹は肩にかからない程度と、長さは違ったが2人とも透き通るようなブロンドの髪をしている。
 姉が妹の手を引き、スイートタウン方向へと走るが、既にパンスト団の射程範囲に入っていた。

 光線が放たれる低い音がレナたちのところまで聞こえてきた。
 2人はうまく光線を避け、丘を下り始めた。

「た、助けないと!」
 岩陰から飛び出そうとするレナをルルが制する。
「こうやって隠れてるボクたちに何ができると思う?」
 
「だからって見捨てるわけにはいかないよ!」
 レナはなかなか言うことを聞いてくれない。
「落ち着いてレナ!ハイグレ魔王を倒せばみんな元に戻るのよ。それまでの辛抱よ!」

「キャッ!?」 
 その時、妹が小石に足を引っ掛け転んでしまった。
 パンスト団の銃口が一斉に転んだ少女へと向けられる。

 レナが叫び声を上げそうになったが、リンに口、ルルに体を抑え込まれてしまった。

「妹だけは……妹だけは……撃つなら私を打って!!」

 銃口が赤く光った時、姉が両手を広げ立ちはだかった。
 パンスト団の光線銃はゆっくりと照準を変更し、光線を発射した。

「きゃあぁあぁああぁあああぁあああ!!」
「お姉ちゃあああああん!!」
 姉は悲鳴をあげピンク色の閃光に包まれた。

「ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」

 姉は赤のハイグレ人間へと変えられてしまった。
 表情は苦痛で歪んでいるが、身体は滑らかで無駄のないハイグレを繰り返す。

「お姉ちゃん!お姉ちゃん返事して!」
「ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
 妹の呼びかけに答えることはなく、姉はただ「ハイグレ」と叫び続けるだけだった。
 パンスト兵は母娘のやりとりなど全く興味がないかのように、すぐさまターゲットを娘へと戻す。
「いやぁ……誰か助けて……」
 力のない声がわずかにレナたちのもとへ届く。助けたくても助けられないもどかしさが3人を苦しめる。
 彼女を助けようと盾になった姉は全く聞こえていない様子だった。
「ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
 いや、聞いていなかっただけかもしれない。いつの間にか笑顔になった姉は、妹がハイグレ人間になるのを望んでいるようだった。

「お姉ちゃああああああああああ!!!!!」
 座り込んだまま大量の光線を浴びる妹。
「ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
 悲鳴も光も物ともせず、ハイグレを続ける姉。
 オレンジ色のハイグレ人間に生まれ変わった妹は、静かに立ち上がると、当然の行為のように深く股を開いた。
「ハイグレッハイグレッハイグレッハイグレッ」
 タイミングを計ったように、姉と同じリズムでハイグレを開始する。
「ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
「ハイグレッハイグレッハイグレッハイグレッ」
 逃げていた姉妹はもういない。丘の上にはいるのはハイグレ魔王の下僕となった2人のハイグレ人間しかいない。

「こんなのヒドイよ!」
 ついに2人の制止を振り切りって立ち上がったレナが叫んだ。
「バカッ静かにして!」
 こだまが返ってくるほど大きい声がパンスト団に届かないはずがなく、彼らの視線と銃口がレナたちへと向けられた。
「あー……気づかれちゃったねえ」
 ルルが呪符を用意しながら言う。
「やるしかないわね」
 リンも杖を握りしめる。
 リンが呪文を発動させる前に、光線が飛んできた。
「2人とも逃げて!」
 見事にレナたちに命中する軌道で飛んできた光線にレナは再び声を張り上げた。
「逃げてどうするの……さ!」
 ルルが指に挟んだ呪符を向かってくる光線へと放った。
 それはやがて、巨大な結界を作り出し3人を光線から護った。

 その間にリンが次々とオマルにのった敵を撃墜させていく。
 彼女の杖の先から火の玉や雷やらが次々の飛び出し、パンスト兵に命中していく。
「あのどの位かかりそうだい?」
「アンタはいいわよね。ただ紙を投げてるだけなんだから!」
 火炎放射器のように真っ赤な炎を噴き出させながらリンが言った。
「心外だな。私の結界だって結構魔力を使うんだよ?」
「はいはい。それっ!これで最後よ!」
 最後の1体となったパンスト兵を盛大に爆発させる。
「2人ともすごい!」
 レナが拍手をしながら言った。
「あのねえ……」
 リンが不機嫌そうな顔でレナを見る。
「いくら戦えば倒せる相手でも、魔力には限界があるし、万が一ってこともあるのよ!アイツらの光線は無限にでるわ。こんな無鉄砲なことをしていたら、いつかやられるわよ」

「ボクもリンと同意見かな。実際にほとんどの魔術師が魔力切れか、ハイグレ人間にされた魔術師の妨害によってハイグレ人間になってる。出来る限り戦闘は避けて魔力を温存しておくのが得策だよ」
 そう説明する2人の表情には、疲労の色が伺えた。
「ごめんなさい……」
「ま、あの場合はいずれ戦うことになっていただろうし、そんなに気に病むことはないよ」
 ルルがぽんとレナの肩に手をあてた。
「せっかく敵を片づけたんだから、早く橋を渡るわよ!」
 リンが歩き出すと、ルルも彼女の後に続いた。
 レナも慌てて彼女たちを追う。

 ハイグレ人間2人は、自分たちを洗脳した兵隊たちが戦闘中も、全滅した後も、変わらずハイグレを繰り返していた。

 レナたちが姉妹の前を横切る時も、彼女たちはハイグレを止めることはなかった。
 レナは妹に一瞬睨まれたような気がした。それが助けてあげられなかったからなのか、パンスト団を撃墜したからなのかはわからなかった。
「ごめんなさい……」
 レナが小さく呟いた。
「私たちだって本当は助けたいのよ。でも、ムリだったの……。だからこそ最後の望みであるレナに賭けてるのよ」
「うん……わかってる」
 レナは頷く。
「あたし……あたし頑張るよ」
 レナは覚悟を決めた。
「この世界を滅茶苦茶にしたハイグレ魔王を倒す!」

「ありがとう、レナ!」
「ふふ、頼もしいね。さあ、この橋を渡ればソウスシティはもうすぐだ」

 ルルの指さす先にはソウスシティの街並みを確認することが出来た。
「街の中は神官様の結界で守られているから、一安心ね」

「それじゃ、まずはソウス神殿を目指そう」
 そういって指差したのは、大きな時計塔だった。針は既にてっぺんを回っていた。3人はソウス神殿を目指し、足早に進んでいった。
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本家でもちょっとだけ活動させて頂いてました。初のブログですが色々とチャレンジしていきたいと思いますのでよろしくお願いします。ハイグレ、ハイグレ、ときどきアップル。

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