短編「負ければハイグレ軍②」

 某所で予告させて頂いた2部になります。とっしーたち返信、感想ありがとうございました!
まだまだ手探りで、いろいろ問題は出てくるかもかもしれないけど、ハイグレファンの懐は広いからきっと良い方法が沢山見つかると思います。長く続いているジャンルですしね、いろんなことを試していきたいと思います。ブログの名前の方もありがたく今後も名乗らせて頂こうと思います。

さて、本題!「負ければハイグレ軍1部」は楽しんで頂けたようで良かったです。
もう3日目ですけどお正月ですからね。最後まで盛り上がっていきましょう(何
それでは2部をどうぞ!(`・ω・´)





 ハイグレ魔王は最初から勝負をする気などなかった。王室へと案内している時からこうなるように計画していた。唯一の迷っていたことといえば、洗脳してこの場に連れてくるか、連れてきてから洗脳するかくらいだった。
「さあて、アンタにはさっそく働いてもらうわよ」
「ハイグレッハイグレッ。何なりとお申し付けください!」
 そうハイグレ魔王が言うと、計画を狂わせることなく洗脳されたリリ子は再び2度のハイグレポーズをした。
「受け取りなさい」
 ハイグレ魔王がリリ子に握り拳を付きだす。リリ子は跪き両手を差し出して、魔王の掌から落ちるものを受け取った。彼女の手にはナンバー99のアクション仮面カードがあった。人間だったリリ子はこれを返してもらうために勝負を挑んだのだ。
「こ、これはハイグレ人間にして頂いた私にはもう必要のないものです……」
「いいえ。必要なものよ」
 リリ子が困惑して黙っているので、ハイグレ魔王が続けた。
「これとアクションストーンを使ってアクション仮面を呼び出しなさい」
「アクション仮面を呼んでしまっていいのですか……?」
「なあに?まさかアタシがアクション仮面に負けるだなんて思ってるんじゃないでしょうね?」
「そっそんなことはありません! ハイグレ魔王様はこの地球の支配者に最もふさわしいお方! アクション仮面なんかに負けるなんてことはありえません!」
 背筋が凍るような恐ろしさを感じたリリ子は必死に取り繕った。
「わかっているならさっさとアクション仮面をお呼び! アンタは私の命令に従っていればいいのよ!」
「ハ、ハイグレ! ハイグレ!」
 リリ子はハイグレポーズを行うと、慣れ親しんだセリフを叫んだ。
「助けてー! アクショ————」
「ハイグレ魔王様!!」
 後ろから大砲のように放たれた怒号にリリ子は驚き途中で声が止まってしまった。
 振り返ると、球状の黒い飛行艇が空に浮いていた。
「何よTバック。今良い所だったのよ」
「も、申し訳ありません……ハイグレ魔王様」
 ムキムキな小麦色の肉体に派手な防具とTバック1枚。ハイグレ魔王の部下のTバック男爵が屋上へやってきた。
「ハイグレッハイグレッ」
 リリ子がハイグレポーズを行う。ハイグレ魔王の部下といってもハイグレ人間にとっては雲の上の存在であるTバック男爵。彼にハイグレポーズを捧げるのはハイグレ人間にとって当然だった。
「魔王様、城に北春日部の仲間が侵入して……ってアレ?」
 ガニ股になって男爵を見上げる女は、まさに探していた侵入者だった。
「侵入者ならちゃんとアタシの部屋まで辿り着いちゃったわよ?」
「も、申し訳ありませんハイグレ魔王様……」
「ちゃんと見張っていなさいよね。でも、もう見張りをする必要はなくなったわ。アンタもここでこれから始まるショーを見ていなさい」
「ショー……ですか?」
 意味がわからないままだったが、男爵は命令に従い屋上に降りた。
「さあ、アクション仮面を————」
「——様! ハイグレ魔王様!」
 再び声が聞こえ、3人は空を見上げる。
 オマル型の飛行物体に乗ってハラマキレディースの3人だった。3人はTバック男爵の隣に着地した。
「ハイグレッハイグレッ」
 リリ子はハラマキレディースに向けてハイグレポーズを行う。
「あら、アンタは研究所にいた……えっと———」
「ハイグレ人間リリ子です! 研究所でのご無礼お許しください。ハイグレッハイグレッ」
 リリ子は研究所を壊滅に陥れた敵へ腰を落としてしっかりと股を開き自己紹介をした。
「アンタが余計なことをしなければもっとスマートな報告になったんだけど、まあいいわ」
 リーダーはハイグレ人間の相手をする暇はないといった様子で、ハイグレ魔王の前へ部下2人と共に整列した。
「報告を聞こうかしら」
「ハイグレッハイグレッ」
 3人は誇らしげにハイグレポーズを行ってから報告を開始した。
「スパイに発見させた北春日部の基地は逃走した1名を除き全ての人間がハイグレ人間へと転向し我々の勢力圏下に置かれました」
 リーダーは誇らしげにピンク色の石を取り出す。
「お納めください。北春日部が作り出したスペアのアクションストーンです」
「ホホホ……」
 ハイグレ魔王がついにもう1つのアクションストーンを手にする。リリ子、北春日部博士たちが身を挺して守ろうとした最後の希望が侵略者の手に渡る。しかし、研究所での北春日部と同じようにリリ子も阻む事などせず、興奮気味にその様子を眺めていた。
「北春日部の基地はこんなものを2度と作れないよう破壊してしまいなさい」
「ハッ」
 リリ子はそれを聞いて胸のつかえが取れた気がした。これでやっとアクション仮面から解放されて自由になれる。ハイグレ魔王のしもべに。それ以上でも以下でもないハイグレ人間になれる。
「さあて、それじゃあアクション仮面をお呼びなさい」
 魔王の言葉にハッと思い出す。そうだ、まだ終わっていなかった。アクション仮面をこちら側の地球に呼んで倒す。それで初めてアクション仮面の呪縛から解放されるのだ。
「魔王様! なぜアクション仮面を!?」
 Tバック男爵が声を荒げて聞く。
「またアタシの考えに文句言う気なのTバック?」
「い、いえ……申し訳ありませんハイグレ魔王様……」
「いいこと? アクションストーンを持たないアクション仮面なんて赤子同然。だから、確実にこの星にアクションストーンが存在しない時に倒してしまえば、もうアタシに逆らう者はいない。ホホホ……さあお呼びなさい。アクション仮面を」
「ハイグレッハイグレッ!!」
 リリ子はハイグレポーズを行うと、慣れ親しんだセリフを叫んだ。
「助けてー! アクション仮面—!」
 恐ろしいほどの棒読みだったが、アクションストーンとアクション仮面カードは虹色に輝き始めた。
 やがて光は屋上中に広がった。
「タウ!」
 低く通る声がリリ子の近くから響いた。アクション仮面だ。
「待たせたね! リリ子君!」
「私もいるわよ!」
 アクション仮面の後ろには、ピンク色のセーラー服を着たミミ子の姿もあった。
「ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」
 リリ子は2人をハイグレポーズで出迎える。かつてのパートナーと双子の妹の2人に自分の生まれ変わった姿、水色のハイグレを見せつけるようにハイグレポーズを繰り返す。
「ご苦労様。アクションストーンは返してもらうわよ」
「ハイグレッハイグレッ。どうぞお受け取りください。ハイグレ魔王様」
 ハイグレ魔王はリリ子からアクションストーンを回収し、イヤリングに収めた。
「リリ子くん!?」
 変わり果てたパートナーを見てアクション仮面が叫ぶ。
「おのれハイグレ魔王! リリ子くんまで……絶対に許さんぞ!!」
「あらあ、そんなこと言われてもねえ……その子と正々堂々、公明正大な勝負をして、アタシが勝ったからハイグレ人間にしてあげただけよ。そうよね?」
 ハイグレ魔王がリリ子に聞く。
「ハイグレッハイグレッ!」
 リリ子がハイグレポーズで答える。身も心もハイグレ人間に成り果てた彼女にとって、ハイグレ魔王の言うことが全て正しいのだ。
「アクション仮面……アンタの掲げる正義の心なんてアタシの力をもってすればこんなにも簡単にへし折る事ができるのよ。ホーッホッホッホッホッホッ!」
「ハイグレッハイグレッハイグレッハイグレッハイグレッ」
 高笑いするハイグレ魔王を讃えるようにリリ子がハイグレポーズを繰り返す。
「リリ子! アクション仮面のパートナーとしての使命を忘れたの!?」
 双子の妹、ミミ子が呼びかける。
「ハイグレッハイグレッハイグレッハイグレッハイグレッ」
 しかし、ハイグレ人間・リリ子の耳には届かない。よほど快感なのかリリ子は笑顔でハイグレポーズを繰り返す。
「安心したまえミミ子くん。私がハイグレ魔王を倒して必ずリリ子くんを正気に戻してみせる!」
 アクション仮面はハイグレ魔王へ向けてアクションビームの打つ構えに入る。
 その言動と行動にリリ子はひどく不快になった。自分は正気だし、ハイグレ魔王へ攻撃を加えようとしている事が許せなった。
————ハイグレ魔王様にアクションビームは効かないのに……。
 リリ子はそれを痛いほど知っている。ハイグレ魔王にビームを放つ前に降伏してハイグレ人間にしてもらうよう請うべきだという事を。
「近くで見るとやっぱりいい男ね。アクション仮面」
 ハイグレ魔王は両腕を胸元で組み、品定めをするようにアクション仮面を見た。
「約束するわ。アンタがアタシに勝ったら、その小娘も地球もみんな返してあげる」
「本当だな?」
「ええ。男に二言はないわ。ただし————」
 ハイグレ魔王は小指を突き立てて薄く笑みを浮かべた。
「アタシが勝った時は……その時は大人しくハイグレ人間になって、アタシの手となり足となって働いてもらうわよ?」
「いいだろう」
 アクション仮面は真顔で即答した。その会話を聞いて不安な表情を浮かべるミミ子にアクション仮面が笑う。
「大丈夫。私は必ず勝つ!」
「ええ! アクション仮面ならハイグレ魔王に必ず勝てるわ!」
「ハイグレ魔王様がアクション仮面なんかに負けるはずがないわ!」
 リリ子が妹に反論した。
「ハイグレ魔王、こちらからも1つ約束させてもらう」
「何かしら?」
「勝負は私たちだけで行う。リリ子くんとミミ子くんはもちろん、ここにいる全ての者の手出しを禁止して欲しい」
「あらいいじゃない。男同士の真剣勝負ってわけね」
 ハイグレ魔王は快諾すると、部下とハイグレ人間に命じる。
「アンタたち、これはアタシとアクション仮面の2人だけの勝負よ。手を出すことは許さないわ」
「ハイグレッハイグレッ」
 幹部たちとリリ子は揃ってハイグレポーズで答えた。
「リリ子……」
 ガニ股になり侵略者へ迷いなく服従している姉を複雑な表情で見つめるミミ子。
 姉だって簡単に洗脳されてしまったわけではないはずだ。リリ子は勝負に負けたと言っているが、かなり抵抗した末に洗脳されてしまった可能性も十分に考えられる。そうだとしたら彼女のためにも負けるわけにはいかない。
「頑張ってアクション仮面!」
「地球の平和のために私は負けない!」
 アクション仮面は胸元で両腕を縦に揃える。
「アクションビーム!!」
 眩しく光る黄色い光線がハイグレ魔王へ向けて真っ直ぐ突き進んでいく。
「し、しまった!」
 ハイグレ魔王は避ける事ができず、ビームをまともに浴びてしまった。
「ぎいやあああああああああ!!」
 堪えきれず大の字になって苦しむハイグレ魔王。
「やった!」
 ミミ子は思わずガッツポーズと声が出てしまう。
「これで終わりだ。ハイグレ魔王!」
 アクション仮面がビームの出力を上げていく。
 
「————から離れなさい!!」
 アクション仮面、ミミ子たちの後ろから声が聞こえた。それも1人だけじゃない。振り返ると丸いものがこちらへ向かってきている。
 傾き始めた太陽と重なってしまっていたが、ミミ子はそのシルエットに見覚えがあった。北春日部博士が開発した飛行艇だ。
「北春日部博士! こちらです!」
 ミミ子は心強い援軍に向かって両手を振って叫んだ。
 ゆっくりと飛行艇が近づいてくる。
「—————イグレッハイグレッハイグレッハイグレッ」
 それに比例して聞き覚えのあるフレーズが聞こえてきた。
 ミミ子は屋上の状況を確認する。ハイグレ魔王はアクション仮面の放っているアクションビームを浴び続け苦悶の表情を浮かべている。部下たちは命令に従って手出しをしないどころか、棒立ちで無表情のままその様子を見守っていた。
「じゃあ……この声は……」
 ミミ子は五感を駆使して逆光で黒く染まる飛行艇を分析した。
「ハイグレッハイグレッハイグレッハイグレッ」
「ハイグレッハイグレッハイグレッハイグレッ」
「ハイグレッハイグレッハイグレッハイグレッ」
 1人だけではない。複数の人の声……女性も混ざっている。なによりこの言葉は……。
「ハイグレッハイグレッ! 申し訳ありませんハラマキレディー様、研究所でご命令に従っていたのですが……アクション仮面の出現が確認され、いてもたってもいられず……」
 赤いハイレグ水着を着た黒髪の女性が報告する。北春日部博士はその女性の隣に立っていた。紫色のハイレグ水着を着せられて。
「私たちよりもハイグレ魔王様にご挨拶を」
 幹部の1人が短く言った。あの状態のハイグレ魔王に挨拶なんて正気で言っているのだろうか。
「ホホホ……気を使わせちゃったかしら?」
 涼しげなハイグレ魔王の声に、ミミ子は驚き魔王を見た。アクションビームを浴び続けていたが、大の字どころか両手は腰に当てて、ハイグレ人間たちを眺めていた。
「ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」
 ハイグレ魔王へ向けて挨拶となるハイグレポーズを揃えて行うハイグレ人間たち。
「あら、誰かと思えばそこにいるのは北春日部博士じゃない。その様子だとようやく考えを改めたようね」
「ハイグレ、ハイグレ。ハイグレ魔王様はワシたちハイグレ人間の支配者……いえこの地球の支配者です。ハイグレ、ハイグレ、ハイグレ、ハイグレ————」
 博士は迷うことなく言い切った。ハイレグ水着を着ている姿を見るだけでも辛いのに声まで聞かされ、ミミ子は思わず目を閉じ耳を塞いでその場にしゃがみ込んでしまいたかった。
 ハイグレ人間の集団の中には野原一家の姿もあった。自分たちが時空移動マシーンによってこちら側の地球に送ったアクション戦士とその家族……。
「ハイグレッハイグレッハイグレッハイグレッ」
「ハイグレッハイグレッハイグレッハイグレッ」
「ハイグレッハイグレッハイグレッハイグレッ」
 北春日部博士の延々と続くハイグレに堪えきれず残りのハイグレ人間たちもハイグレポーズを再開する。
「ハイグレッハイグレッハイグレッハイグレッ」
 気づくとリリ子までが周りに合わせてハイグレポーズを開始していた。
「ホホホ、いつまでもそんなものに乗っていないで降りてきなさい。特別にアタシがアクション仮面に勝つところを間近で見せてあげるわ」
「ハイグレッハイグレッ! ありがとうございますハイグレ魔王様!」
 ハイグレ人間たちは声を揃えて感謝の言葉を言うと、ぞろぞろと飛行艇から降りてきた。
 あまりの急展開に呆気にとられていたミミ子は、気が付くとハイグレ人間たちに取り囲まれてしまっていた。
「どうしたのかしらアクション仮面? アクションビームの威力が落ちているみたいよ」
 ハイグレ魔王はぐっと背伸びをしながら言った。
「くっ……」
 アクション仮面の頬に一筋の汗が流れる。
「もう少し遊んであげてからと思ってたけど……ハイグレ人間たちが見てるんじゃそういう訳にもいかなくなっちゃったわねッ!」
「がはッ!?」
 ハイグレ魔王はビームを辿るようにしてアクション仮面の懐に潜り込み、お腹に強烈な一撃を放った。予想外の攻撃に反応できず、クリーンヒットを許してしまったアクション仮面はその場にうずくまってしまう。
「アクション仮面!」
 ミミ子が駆け寄ろうとするが、ハイグレ人間たちが邪魔で近づくことが出来ない。
アクション仮面がしばく動けないことを確認するとハイグレ魔王はゆっくりとミミ子たちのもとへ近づいてくる。
「やっぱり見栄えが悪いわね。アンタもハイグレにおなりなさい」
 そう言ったハイグレ人間の小指はピンク色に光っている。
「待て……ハイグレ魔王……約束と違う……ぞ……」
 アクション仮面がなんとか声を絞り出して抗議する。
「約束?」
「これは2人だけの勝負って約束したじゃない!」
 ミミ子も怒りを露わにする。
「なんのことかしら」
「ハイグレ魔王……貴様……それでも男か……」
「悪いわね! アタシはオ・カ・マよ」
 ハイグレ魔王は躊躇なくミミ子へ光線を発射した。
「い、嫌……いやああああああああああああ!!」
 姉同様、眩しく点滅する光に包まれたミミ子。
「ハイグレッハイグレッハイグレッハイグレッ」
 やがて光が収まるとミミ子はピンク色のハイグレ姿となり、すぐさまハイグレポーズを開始した。
「ハイグレッハイグレッハイグレッハイグレッ」
「ハイグレッハイグレッハイグレッハイグレッ」
「ハイグレッハイグレッハイグレッハイグレッ」
 周りに群がるハイグレ人間たちもミミ子に合わせてハイグレポーズを行う。
「気分はどう?」
「ハイグレッハイグレッ。とっても気持ちが良いです! ハイグレ魔王様! ハイグレッ! ハイグレッ!」
「あらわら、あれだけ嫌がっていたのに情けないわね」
 大人数で揃ってハイグレポーズをするという環境は、ミミ子に抵抗させる思考を奪い、自分が何者で何をすべきかを急速に刻みこませることになり、あっという間に洗脳されてしまった。
「ハイグレッハイグレッハイグレッハイグレッ」
「ハイグレッハイグレッハイグレッハイグレッ」
「ハイグレッハイグレッハイグレッハイグレッ」
 ハイグレ人間たちは夢中でハイグレポーズを繰り返す。
「ミミ子くん……すまない」
「アクション仮面もハイグレ魔王様と戦うなんてやめて忠誠を誓うのよ! ハイグレッハイグレッ」
 ミミ子の表情は笑顔だった。
「ぐ……アクションストーンさえあれば……」
「負け惜しみかしら?」
 ハイグレコールの大合唱を背に、ハイグレ魔王が言う。
「いいわ。それで満足するならアクションストーンを返してあげる」
 ハイグレ魔王は両耳のイヤリングから2つのアクションストーンを取り出す。
「1つはアンタのアクションストーン。もう1つはスペアのアクションストーン。スペアの方にはアタシの魔力が込めておいたわ。本物を選べばアンタはアタシと戦える力を取り戻すことが出来る。スペアを選んだらアンタはアタシのかわいいし・も・べ。どう?」
 この絶体絶命の状況で選択肢はなかった。
「いいだろう」
「ホホホッ! モノわかりの良い男は好きよ。オマケでアタリを引いたらかつてのパートナー2人も人間に戻してあげるわ」
 ハイグレ魔王の出血大サービスに驚いたのは、パートナー2人だった。
「嫌ですハイグレ魔王様! 私たちはハイグレ人間として魔王様のお側に————」
「私たちは人間になんて戻りたくありません! ハイグレ魔王様どうか————」
「おだまりっ!!」
「ヒッ……」
「ハイグレ人間の分際でアタシの決めたことに文句言う気!? アンタたちはアタシの決めたことに大人しく従っていればいいのよ!」
「ハッハイグレ、ハイグレ……申し訳ありませんハイグレ魔王様……」
「さあ、静かになったし、さっさと始めましょう」
 ハイグレ魔王は両手を差し出す。それぞれの手にアクションストーンが乗っている。アクション仮面はそれを真剣に吟味する。
「さあ、好きな方を選んで」
 見た目では全く一緒だった。
「こっちだ」
 アクション仮面が選んだのは左手のアクションストーンだ。
 自分の手でベルトをバックルを捻る。『A』のアルファベットが刻印されたバックルは高速で回転し、アクションストーンを収める台座が姿を現した。
 アクション仮面がアクションストーンをセットするとベルトは再びもとの状態へと戻った。
「…………」
 アクション仮面の体に変化は起こらない。
「う……うぐ……嘘……いや……」
 ミミ子が突如苦しみ始める。
「大丈夫ミミ……あっ……力が……」
 2人の体が光輝き始め、やがて眩しくて直視できないほど眩しくなった。
「あれ……私……一体何を……?」
「ミミ子? そうだ私ハイグレ魔王にハイグレ人間に……」
 セーラー服に戻った2人は不思議そうに自分たちの体を確認する。
「リリ子くん、ミミ子くん!」
「アクション仮面!」
 両腕を開きアクション仮面は2人を迎える。
「あらあ……アタリを引いたのね、アクション仮面」
 力を取り戻したアクション仮面を前にしても余裕の表情を作るハイグレ魔王。
「さあ改めて勝負だ。ハイグレ魔王!」
「アンタたち3人。大人しくハイグレ人間になっていた方が良かったと後悔してももう遅いわよ」
ハイグレ魔王が笑っているが、アクション仮面はアクションビームの構えを取る。力が戻ればハイグレ魔王にも効く威力の攻撃を放つことが出来る。
「Tバック男爵、ハラマキレディース、そしてハイグレ人間たち、ショーも終盤よ。よ〜く見ていなさい」
「ハイグレッハイグレッ」
「ハイグレッハイグレッ」
「ハイグレッハイグレッ」
 幹部とハイグレ人間たちが了解の意のハイグレを行う。
 リリ子とミミ子は異様な雰囲気に包まれた周囲を見回す。少し前まで自分たちもこの一員として操られていたと思うと恐ろしかった。
「ショーだなんて……絶対負けちゃダメよアクション仮面!」
「ハイグレッハイグレッハイグレッハイグレッ」
「アクション仮面!?」
 リリ子とミミ子の真ん中で、アクションビームの構えをしていたはずのアクション仮面。
「ハイグレッハイグレッハイグレッハイグレッ」
 しかし、そのアクション仮面は今、ハイグレポーズを繰り返している。
「どういうこと!?」
「ホホホ……アタシの魔力が効いてきたようね」
 いつの間にか3人の目の前まで接近していたハイグレ魔王が言う。
「だって私たちが元に戻ったってことは、あのアクションストーンには……」
「ホーッホッホッホッ! 両方とも魔力入りに決まってるじゃない。アクション仮面もわかっててハイグレ人間になりたいから受け取ったのかと思っていたわ」
 ハイグレポーズを繰り返すアクション仮面の前で大きく高笑いをするハイグレ魔王。
「また騙したのね……」
 リリ子の声は怒りに震えていた。
「だってパワーアップしたアクション仮面の攻撃を受けたら本当に負けちゃうかもしれないじゃない」
「卑怯者!」
「ハイグレ魔王様は誰も騙していないし卑怯者でもない」
 今にも飛びかかろうとする少女2人をアクション仮面が制した。
「そして、私はハイグレ魔王様に勝てるなどありえません」
 リリ子とミミ子が呆気にとられていると、アクション仮面はその場に平伏した。
「アタシに勝てないことが理解できたなら、これからどうするべきかわかるわね?」
「ハイグレ魔王様、この私にハイグレ姿になる権利をお与えください」
 アクション仮面は床へ額を勢いよくぶつけた。
「仕方ないわねえ。これをお飲み」
 そう言ってハイグレ魔王が取り出したのは、もう1つのアクションストーンだった。魔王が石を口へと運ぶと、アクション仮面は抵抗する事なく顔を上げて、だらしなく口を開いた。
「ダメよアクション仮面!」
「お願い目を覚まして!」
 無情にもハイグレ魔王がアクションストーンをアクション仮面の口の中へ放り込む。
「飲み込むのよ」
 ゴクリと大きな音が聞こえる。
「う……うぐ……うおおおおおお!?」
 アクション仮面の全身が赤く光り、やがて全身を包み込んで激しく点滅した。閃光の中で装備品は次々と奪われていく。
 光が収まると仮面とグローブ、ブーツだけを残され、新たに緑色のハイレグ水着を与えられていた。
「ハイグレッハイグレッ! 私はハイグレ人間としてハイグレ魔王様に永遠の忠誠を誓います。ハイグレッハイグレッハイグレッ」
 忠誠の言葉を言い終え、アクション仮面はハイグレポーズを繰り返す。
「せっかく人間に戻したんだけど、この2人はどうするの?」
 アクション仮面が2人の少女を見る。2人は身を寄せ合ってアクション仮面とハイグレ魔王を睨みつけている。
「ハイグレ魔王様のお気に召すままに」
 予想はしていたが、リリ子とミミ子にとって辛い答えが返ってきた。アクション仮面はもう守ってくれない。もう自分たちのパートナーではないのだ。
「アタシが殺せと言ったら?」
「ハイグレッハイグレッ。全てはハイグレ魔王様のために」
 一切躊躇う事なくアクション仮面が答える。
「冗談よ。さっさとハイグレ姿にしておしまい」
「ハイグレッハイグレッ」
 アクション仮面はこの場所で最後の人間となったリリ子とミミ子を見る。
「しっかりしてアクション仮面!」
「ハイグレ魔王こそあなたの倒すべき敵なのよ!」
 最後の説得を試みるもアクション仮面には届かない。静かにアクションビームを放つ構えに入る。
「違う。ハイグレ魔王様はこの地球の支配者。我々はハイグレ人間としてハイグレ魔王様の宇宙征服の礎になるんだ」
「助けて! アクションか————」
「ハイグレビーム!!」
「きゃあああああああああああ!!」
 悲鳴の二重奏が赤く染まった空に響いた。
 黄色ではないピンクのビームがハイグレ魔王へではなくかつてのパートナー2人に放たれた。
 リリ子は水色、ミミ子はピンクと、それぞれハイグレ人間だった時の姿へと戻った。そして、再びハイグレポーズを行うのだった。



「ハイグレッハイグレッハイグレッハイグレッ」
「ハイグレッハイグレッハイグレッハイグレッ」
「ハイグレッハイグレッハイグレッハイグレッ」
 ハイグレ城の最上階では無数のハイグレ人間たちの声が響いていた。
「アクション戦士、北春日部、アクション仮面のパートナー、そしてアクション仮面。全員揃っています」
 ハラマキレディースが最終確認をして、報告を行っている。
 最前列には彼女らの報告通り、真ん中にアクション仮面。両側にパートナーのリリ子とミミ子。その後ろにアクション戦士のしんのすけと、その家族。3列目にはその他のハイグレ人間と、そこに混ぜられた北春日部博士がいた。ハラマキレディースの報告中も全員で一糸乱れぬハイグレポーズを繰り返している。
「こちらがカードです」
 ハイグレ魔王は金色のカードを受け取る。アクション仮面の顔が描かれたナンバー99のカードだ。
「悪趣味ね。砕けよ!」
 カードはハイグレ人間たちの真上へと飛ばされ、粉々れ破壊された。金色の粉がハイグレ人間達に降り注ぐ。
「ハイグレッハイグレッハイグレッハイグレッ」
「ハイグレッハイグレッハイグレッハイグレッ」
「ハイグレッハイグレッハイグレッハイグレッ」
 金色の粉雪など気づいていないかのように一心不乱に忠誠を誓い続けるハイグレ人間たち。
「ホーッホッホッホッ」
 夕日が射すハイグレ城。そこに地球の敗北を意味するハイグレコールと、ハイグレ魔王の勝利の笑い声が止むことはなかった。
「ホーッホッホッホッホッホッホッホッホッホッ」
「ハイグレッハイグレッハイグレッハイグレッ」
「ハイグレッハイグレッハイグレッハイグレッ」
「ハイグレッハイグレッハイグレッハイグレッ」

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非公開コメント

No title

まつざか先生がリーダーになっていろいろやってるのがいいですね
彼女主人公で短編がほしい活躍ぶり

Re: No title

コメントありがとうございます
基本的には平等というか、上も下もなく最下層の存在がハイグレ人間だと思っているんですが、やはり少なからず派閥や上下関係はあるのではないかとも思っています
特にまつざか先生はハイグレ人間には重すぎるほどの重大任務を負っていましたからね。成功したとなればやはり他のハイグレ人間から尊敬される立場になるのではないのかなあと。
侵略者の言い成りになって、地球最後の希望の基地を暴いて壊滅させたスパイに対して付き従う北春日部博士や元同僚のよしなが先生や上司の園長先生……たまらないですね(*´д`*)
そんなまつざか先生にふさわしいシチュが思いついた時は是非書いてみたいですね
つい熱くなってしまいましたね……やはり原作は最高です(*´д`*)
それではまた(`・ω・´)ノシ

こういうSSを待ってたッッッ

こういうSSをずっとまってたんや\(^o^)/
最高だった(=`ェ´=)

ps,俺もまつざか先生が主人公の外伝読みたいな!今流行りのハラマキレディー化してアクション仮面や研究所で洗脳されたメンバー引き連れて地方都市襲うとか(チラチラ

Re: こういうSSを待ってたッッッ

>>AIさん
コメントありがとうございます
楽しんで頂けたようで良かったです
やはり原作SSは反則級に最高ですよね(*´д`*)
これからも様々なSSを書いていけるよう精進してまいりますので当ブログを是非よろしくお願いします(`・ω・´)

相互リンク依頼

あけましておめでとうございます
お邪魔いたします、『ハイグレ郵便局 香取犬支店』の香取犬です
当方のブログへのコメント、ありがとうございました。また、ご挨拶が遅れてすみませんでした
実は年末年始にPCを買い換えまして、その移行作業に追われていました(なおMacではなくWinです。SSDは魅力的でしたが予算の関係で見送り……)。それが大体落ち着いたので筆を執った次第です

ミミ子リリ子の洗脳に絶望するアクション仮面、アクション仮面の洗脳に絶望するミミ子リリ子、という真逆のシチュエーションが両方共用意されているのが素晴らしかったです
アクション仮面側勝利の原作を元にしているからこそ、敗北の無様さが際立っていますね。原作SSにおける感情移入やキャラ想像のし易さは、オリジナルSSにはないメリットだと思います

表題の件ですが、先ほど当方のブログのリンク集内に『ハイグレSS秘密研究所』様を追加させていただきました
差し支えなければ、貴ブログのリンクにも『ハイグレ郵便局 香取犬支店(http://highglepostoffice.blog.fc2.com/)』を加えていただければ幸いと存じます
(リンクがご迷惑でしたらご一報くださいませ)
同じハイグレ小説書きとしてお近づきになれたら嬉しいです
ご検討のほど、よろしくお願い致します

Re: 相互リンク依頼

>香取犬さん
コメント、ご来所ありがとうございます!
お忙しいところありがとうございます。SSD計画は頓挫してしまいましたがこちらは落ち着きました(´・ω・`;)
Windowsはハードウェアだけでなく色んなソフトが充実しているので新しい環境でさらに素晴らしい作品が生まれることを期待せざるを得ないです(*´д`*)

原作はみなさんの入り口であり決してブレない原点、中心であり続ける大切なものだと思っています
書いていてすごく楽しいですけどちょっと緊張しますね
香取犬さんの書かれた「アクション仮面vsハイグレ魔王 Side:LAB.」も楽しく読ませて頂きました
実は不思議な流れになってしまいますが自分は本家に投稿した作品の1つに原作をネタにした「ハイグレ魔王〜if〜」というものがあったりします(現在は公開していないですが……)

相互リンクの件ですがもちろん喜んで追加させて頂きます!(*´д`*) ・ハイグレ郵便局 香取犬支店(http://highglepostoffice.blog.fc2.com/)』
こうやってハイグレ小説書きさんがどんどん繋がっていけたらいいですね
今後とも末長くよろしくおねがします(`・ω・´)


感謝

はじめまして。小さい頃原作を見てからハイグレに興味をもち、原作のバッドエンドを見たいなぁと夢見た一人です。今回も興奮致しました。
あの、もし宜しければ、ifもまた見てみたいのですがダメでしょうか?あれがどうしても、もう一度見てみたいです。どうかよろしくお願いいたします

Re: 感謝

>ひでさん
はじめまして。コメントありがとうございます
映画を見てバッドエンドを妄想してしまったら、その瞬間から完全なハイグレファンですよね
俺もひでさんと同じでした
ifを覚えていてくださってありがとうございます。とっても嬉しいです(*´д`*)
たくさんの方に復活して欲しいとの声を頂きまして、こんな俺の書いたSSを欲してくださる人がいらっしゃるなんてとても光栄です
あのままで公開というわけにはいかないと思いますが、頑張ってみようと思います
これからもよろしくお願いいたします(`・ω・´)

ありがとうございます

こちらこそありがとうございます。これからも応援し続けます。原作バッドエンドは最高ですね(^^)笑
プロフィール

ぬ。

Author:ぬ。
本家でもちょっとだけ活動させて頂いてました。初のブログですが色々とチャレンジしていきたいと思いますのでよろしくお願いします。ハイグレ、ハイグレ、ときどきアップル。

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